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「花の谷の物語」〜パキスタン・フンザ(春)

by 清水久美子

2回めのフンザ行きは春にしようと決めていた。

杏の花が咲き誇るフンザの春は桃源郷のように美しいと聞いていた。

花が咲く時期は毎年ばらつきがあるらしいので、見逃さないようにと3月初旬からフンザに滞在していた。にも関わらず、4月になっても依然として冬のような天候が続いていた。

「今年は変だ。春が遅い。寒すぎる。」と村人までも口々に言っていて、えらい年に来てしまったなぁと思った。空を見上げれば鉛色の雲が覆いかぶさり、険峻な雪山がいっそう体を震わせる。

暖房器具もない安宿で毛布にくるまりながら毎日春を待ちわびていた。

4月某日、誕生日を迎えた朝、この春最高の大快晴が訪れた。わたしにとって最高の誕生日プレゼントだった。神様が、さぁ、思う存分写真を撮りなよと言ってくれた気がした。

「いい天気だね!」初めて顔を合わせる人とも、その一言から会話が始まる。満開の花の下で日向ぼっこをする老人、クリケットに夢中な少年たち、ブランコを作りはしゃぐ女の子、枝から枝へとステップを踏む鳥、、村の生物が一丸となり、春の訪れを祝福した。

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