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「レモン色の季節」—パキスタン・フンザ(秋)

by 清水久美子

パスー村でとある一家に出会ったとき、巡り合わせのおもしろさを感じずにはいられなかった。

ひょんなことから下宿させてもらうことになった家族が、中学時代に見たあの番組制作に関わった家庭だった。その番組でひときわ印象に残っていたかわいらしい男の子がいた。成長した彼もたまたま帰省していて、人懐っこい笑顔は15年前のそれと変わらない。彼から撮影の裏話を聞きながら、村を案内してもらうのはなんとも不思議な気持ちだった。

ここに来るまでに随分と時間がかかってしまったけれど、きっとこれ以上ない最高のタイミングだったのだと思えた。

一泊だけお世話になろうと思っていたのに、「ここはあなたの家」という彼らの優しい口癖に甘え、1ヶ月も住まわせてもらってしまった。お母さんが可愛がっている牛の豆知識を教えてくれたり、娘さんと一緒にかまどを使って料理したり、お兄さんと氷河を見るためにトレッキングすることもあった。

そんなふうに村での日々を楽しんでいたら、緑だった木々があっという間に衣替えしていて眩しいほどの檸檬色に染まっていた。

季節とともに移り変わる人々の日常。

「自然が豊かで、物が少ない暮らしの方がシンプルで幸せ」なんて常套句を旅行者目線で言うのはおこがましい気がしていた。けれど、素敵な花を見つけたこと、チャパティが上手に焼けたこと、山羊に子供が生まれたこと、、、そんな日々の中にささやかな喜びを見つけ、分かち合い、笑い合い、寄り添って生きている人たちを目の当たりにし、肩の力がするりと抜ける。

ゆっくりと丁寧に紡がれるそれらの暮らしは、やはりどうしても美しい。

TRANSIT(トランジット)特別編集号 美しきイスラームという場所

p48~55 Pakistan 花の谷の物語

フンザという場所を知り、一瞬にして心奪われた中学時代。ブラウン管の向こうに見た小さな村は、今日は何色をしているだろう。15年間、かの地を夢見た写真家が切り取った桃源郷の春と秋ー。

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